今回は、イタリアのクリスマスケーキってどんなもの?地方による伝統菓子も紹介!と言うテーマでお届けします。
イタリア語だと、ケーキにあたる言葉はTORTA(トルタ)です。
でもその分類は、主に私たち日本人が想像する様なふわふわスポンジケーキに限りません。
今回のテーマ、イタリアのクリスマスケーキも恐らくちょっとイメージが違うと思われると思います。
甘いもの一般を指すDOLCE(ドルチェ)の視点から、地方ごとのクリスマス伝統菓子もいくつかご紹介します。
共通して言えるのは、日本でのクリスマスケーキは直前に購入するナマモノなのに対し、イタリアのクリスマスケーキも伝統菓子も、早くから準備OKの日持ちするものだと言う事だと思います。
長年住んでいて気付いたのですが、当日もしくは直前に慌てて用意しなくて済むように、しかもイタリアの長いクリスマスシーズン中ずっと対応できる様に日持ちするようにと生み出されてきたものなのでしょうね。
イタリアのクリスマスケーキってどんなもの?地方による伝統菓子も紹介!
最後までお付き合い下さい!
目次
イタリアのクリスマスケーキってどんなもの?

近年は日本でも名を聞くし手に入るようになった、パネットーネやパンドーロを既にご存知の方も多いかと思います。
それが一般に言われるイタリアのクリスマスケーキです!
イタリア人は伝統をとても大事にする国民です。
キリスト教カトリック信者が殆どであるイタリア人にとって、クリスマスは宗教上大変重要かつ神聖な行事です。
前夜若しくは当日には、殆どの信者の方々が地元の教会のミサに出向きます。
パンデミック禍では色々規制されたりオンライン化したりという事もありましたが、今年はやっとパンデミック以前通りに行われるところが殆どなのではないかと思います。
それと共に、色々な規制があった時は例外でしたが、家族親族が集まって食卓を囲むのも伝統であり習慣です。
そうなると当日お料理するのは難しく、早々と段取りをして準備を整える必要があるわけです。
クリスマスケーキにしても然りで、早々と用意されておくものなのですね。
初めてクリスマスのケーキと言われてこのパネットーネやパンドーロを出された時に、正直『これがケーキ?』と思ってしまいました!
クリスマスのご馳走の後のデザートとして振る舞われる訳なのですが、日本人と比べてもそれほど大柄なわけではないイタリア人、胃の強さはあっぱれです(笑)。
パネットーネとパンドーロ、この時期人気を二分するこのクリスマス菓子の代表格、違いを簡単に説明しますね。
パネットーネ

ミラノ発祥。
酵母を使って発酵する、どちらかというとケーキと言うより菓子パンです。
パネットーネというのは大きなパンという意味もありますが、トーニのパンが訛った言葉だとか。
そのトーニさんが一体どなたかというのにも諸説ありなのですが、私が以前聞いた話を紹介します。
それは、かつてミラノ公国時代に遡ります。
領主スフォルツァ家のクリスマスの晩餐の際に料理人がデザートをうっかり焦がしてしまい、大慌てな事態になった事があったそうです。
その事態を救ったのがトーニという料理人の弟子だったと言うのです。
トーニさんは、彼の母親がいつも作っていたという”酵母を使った発酵パン”を咄嗟に作り、事なきを得たそうなのです。
それがとても美味しく気に入られて、トーニのパンと言う名でクリスマスのお菓子として定着するようになったのが由来と言う事でした。
今ではイタリア全国でさまざまなバリエーションが存在します。
パネットーネの形はドーム型ですが、ミラノ発祥のパネットーネは背が高いタイプ、一般的には背が低くて幅の広いドーム型のものを良く見かけます。
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パンドーロ

パンドーロの発祥もやはり北イタリアで、ヴェネト州のヴェローナだと言われています。
19世紀末にメレガッティという菓子職人によるレシピの記録が残っているのだそうです。
イタリア語で意味付けすると、メーレはりんごの複数形、ガッティは猫の複数形である事から、メレガッティは複数のりんごと猫!
今もこのりんごと猫が紋章のメレガッティというメーカーが存在してパンドーロを生産しています!
形は星形、中はシンプルにバニラ風味のしっとりスポンジで、パンドーロを入れた袋の中に粉砂糖を入れて口をしっかり閉めて袋ごと振るのです。
均一に粉砂糖をまぶす事ができる、最早イタリア人誰もが知っている技なのでした(笑)。
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パネットーネ派かパンドーロ派か?
因みに、我が家はずっとパンドーロ派でした。
しっとり感があってシンプルさが好みだったのです。
それに、パネットーネの中の砂糖漬けフルーツピールが苦手なのですね〜。
でも、ある時からレーズンのみのパネットーネ人気が急上昇(笑)!
恐らくこの砂糖漬けフルーツピールが好きか嫌いかで大概の場合はパネットーネ派かパンドーロ派かが別れるのではないかと思われます。
クリスマス1ヶ月前くらいから出回るパネットーネやパンドーロ
お菓子屋さんで綺麗にラッピングされて並んでいるものは、この時期プレゼントとしても活躍します。
スーパーで大量に積み上げられた商業ベースのものから有名シェフによる限定ものやこだわり素材で作られる職人技のものやあり、数百円のものから数千円それ以上のものまで値段も当然幅広く存在します。
商業ベースのものだと大概数ヶ月の賞味期限があるので、クリスマスシーズン後に割引されるのを狙って、わざわざ朝食用にと買い求める人もいるくらいです(笑)。
イタリアのクリスマスケーキという位置づけとは言え、我が家も含めて食後のデザートよりも朝食用の菓子パンの様に、又は午後のおやつとして食べる事が多いからですね。
味覚の好みといえば、イタリア人は本当に甘党が多いようで、既に甘いこのパネットーネやパンドーロにクリームを挟んだりアイスをつめたりなどアレンジして食べる人もいます。
よりデザート的にはなりますが、私個人としてはそのままがやはり一番良いですね。
(※これは2023年11月15日の加筆なのですが、今年は今の段階で既にもうパネットーネもパンドーロも勢揃いしている様子が伺えます!)
その他地方による伝統菓子を紹介

上記のお菓子(パン)は最早イタリア全国共通となっているお菓子ですが、ここでは地方毎の伝統クリスマス菓子を紹介します!
トッローネ/ヌガー

イタリアではトッローネと呼ばれるヌガー菓子。
イタリア全国で見られるクリスマスを代表するお菓子のひとつですが、実はイタリアに限らず似たようなお菓子は近隣諸国でも見られます。
恐らく古代にイスラム教国やギリシャの方から伝わったものではないかと言われています。
トッローネというイタリア名の由来は焙煎するという意味のラテン語、TORREREといわれています。
イタリア各地に名産地とされているところが存在します。
私はあの歯にくっつく感じがイマイチ苦手なのですが、歯にくっつかない固形バージョンも存在しますし、ナッツ入りチョコスティック的なチョコレートバージョンもあります。
主な材料は蜂蜜、砂糖、卵白とナッツ類。
材料を聞いただけでもかなり甘そうですが、クリスマスに欠かせないお菓子の一つです。
ナポリのストゥルッフォリ

何かを思い出させる・・・
あくまでも私個人的意見ですが、そう、なんとなくかりんとうを懐かしく思ったりするお菓子です!
ギリシャで“球型の生地”を意味するSTROGULOS と呼ばれるお菓子が起源らしいです。
小さく丸めた甘い生地を元々は豚の油だったらしいのですが、熱々の油で揚げて蜂蜜に絡める・・そこに砂糖漬けのフルーツやカラフルな砂糖菓子を加える事で、元々は質素なお菓子として生まれたものの見栄えを華やかにするのです。
蜂蜜が思いっきりかかっている、もしくはまぶしてあるのでスプーンで掬って食べたり、気にならなければ手で一粒一粒口に入れるのですが、これが食べ始めると止まらない!
非常に危険な逸品なのでした(笑)!
テルニのパンペパート

これまたナッツがふんだんに使われていて、小ぶりなのにずっしり重い!
胡椒をかけたパンという名の通り、胡椒が効いてスパイシーなのが特徴です。
レモンやオレンジという柑橘類の香りもほのかに。
小麦粉や蜂蜜の他にこのお菓子にはビターチョコレートも溶かして混ぜ合わされています。
正直一番最初に目にした時の感想は、“何だこの溶岩のような美しくないお菓子は?”でした。
色んな味が凝縮していてこれは美味しい!とは思えなかったのですが、年齢なのか慣れなのか味覚が変わった様で今ではつい求めてしまいたくなる味です。
テルニ以外にもフェッラーラ辺りでも伝統とされている様です。
シエナのパンフォルテ
パンフォルテとは強いパンという意味ですが、この場合の強いはどうやら酸味の効いたパンを表す様です。
オリジナルのパンは水、蜂蜜、フレッシュフルーツから作られた柔らかなもので、数日後にはカビが発生し酸味が強くなったと言うのです。
トスカーナ州のシエナでは1200年頃、入植者たちや使用人たちがモンテチェルソ修道院の修道女たちにこのパンを贈呈したらしいです。
レシピは時代と共に修正改善され、アーモンドが加わったり砂糖漬けフルーツが加えられたり、またシナモンなど数種類のスパイスが入ります。
クリスマス時期に準備される伝統菓子となりましたが、実際は一年通して目にします。
また、先述したテルニのお菓子と同じ名前、パンペパートと呼ぶこともある様です。
ローマのパンジャッロ
パンなんとかと言う名前が並びますが、今度は黄色いパンという意味。
なんとこのお菓子の起源はローマ帝国時代にまで遡るのだそうです!
冬至の頃に、それを超えると再び日中が長くなって行く事への祈りや願いを込めて食べられていたお菓子だとか。
黄色のパンというのは外見がサフランによる黄色であるところからきています。
その黄色のパンの中身は松の実やアーモンドなどのナッツ類に乾燥イチジク、蜂蜜にビターチョコにオレンジの皮。
リコッタチーズが加わえられることもあります。
その他紹介しきれないお菓子たち
他にもアブルッツォのパッロッツォやピエモンテのビュッシュ・ド・ノエル(トロンケット・ディ・ナターレ)、シチリアのアーモンド菓子クバイータなどまだまだ沢山のクリスマス伝統菓子が存在します!
そしてイタリア人みんな大好きなチョコレートも欠かせません!
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イタリアのクリスマスケーキってどんなもの?地方による伝統菓子も紹介!のまとめ

今回はイタリアのクリスマスケーキってどんなもの?地方による伝統菓子も紹介!と言うテーマでお届けしました。
日本で一般的なクリスマスケーキと言うと、ふわふわスポンジにフワッと口に広がるクリームのデコレーションケーキという感じですが、イタリアのクリスマスのお菓子は全然違いますよね。
クリスマスはキリスト教信者の方々にとって神聖な意味での祝日であり、家族や親戚が集まって沢山のご馳走を食べるというだけでなく教会でのミサにも赴きます。
予め用意しておけるもの、また日持ちのするものが自然と文化として根付いたのではないかと思うのです。
そう考えると日本のお正月のおせち料理やお餅と同じですね。
それにしても、蜂蜜にナッツ類に砂糖付フルーツにチョコレートに・・相当なカロリーに違いないと想像してしまいます。
イタリア人はゴローサ(味に貪欲な意味で甘党だったり美味しい物好き)な人たちが多いののがよく分かります。
散々お料理にも手をかけるので、クリスマス期間に太ってしまうと気にする人が多いのも当然ですよね(笑)。
地方地方での伝統のお菓子があるのも、さすがイタリアという感じがします。
年齢と共に時が経つのがより一層早く感じられる日々ですが、こうした伝統のお菓子で季節感を感じたり楽しんだりする事も大切にしたいです。
最後までお読み頂きありがとうございました!