今回は中部イタリアウンブリア州のイースター伝統チーズパンについてお届けします。
もはやイースターでなくとも一年を通して出回っているものですが、かつてはイースターの時期ならではのものでした。
イタリアに暮らし始めた30年前、初めてこのパンを口にした時の感動は忘れられません。
当時滞在していた小さな町では、女性たちが一週間分のパンを薪の釜戸で焼いていました。
その同じ釜戸でこのイースターのチーズパンもまとめて焼き、親戚が集まってはその微妙な味の違いを食べ比べていたのが印象的でした。
今回はその名はトルタそれともピッツァ?ウンブリアのイースター伝統チーズパンを紹介!と言うテーマでお届けします。
最後までお付き合いください!
目次
その名はトルタそれともピッツァ?
イタリアでは同じような食材が地域ごとに違う名前で呼ばれている事がよくあります。
例えば名前が違うパスタでも、出てきたら同じ様な代物で、よっぽど同じ名前で呼んでも良いのではないかと思ったりする事がありますが、よく言えばそれぞれの由来や歴史を重んじているし、ある意味自己主張が強く協調性のない民族性も伺えます。
このチーズパン、主にウンブリア州やマルケ州といった中部イタリアのイースターの伝統です。
ちなみにウンブリアではウンブリアの料理と紹介されますし、マルケ州ではマルケの修道院で生まれたものと言われます。
私自身はウンブリアに縁があるのでここではウンブリアでの話をお届けします。
トルタかピッツァか
普通に辞書を引くと、トルタTORTAの訳はタルト・ケーキで甘いもののイメージが強いです。
一方でピッツァPIZZAはお馴染みのピザの事になります。
ですが、ウンブリアではそれ以外のものにも使われます。
小麦粉を練って発酵させたパン生地の料理にトルタやピッツァと言う呼び名が当てはめられるのです。
例えば、ウンブリア州の伝統の薄く焼かれたパン、トルタアルテーストもその一つです。
このトルタも決して甘くありません。
更に、トルタと呼ぶかピッツァと呼ぶかはウンブリア州の中でも地域によって違うのでややこしいのです。
ウンブリア州には二都市しか県庁所在地しかありません。
州都であるペルージャのペルージャ県と、ウンブリア州南部のテルニ県です。
一般的にはテルニ県の地域ではピッツァと呼ばれて、ペルージャ県の方ではトルタと呼ぶ事が多い様です。
夫の出身がテルニ県なので、私自身は自然とピッツァという呼び方をしてきたのですが、ペルージャ県で暮らす様になりパン屋さんでもレストランでもピッツァと言うとトルタ?と確認されることが多いことに気付きました。
通用しないわけではないのですけれど、それぞれしっくりくる言い方というのがある様です。
ちなみに、トルタアルテーストも、夫の出身の地域ではトルタではなくピッツァと呼びます。
ウンブリアのイースター伝統チーズパンを紹介!
英語でイースターの復活祭は、イタリア語ではPASQUAパスクワです。
このチーズパンは『トルタ・ディ・パスクワ』又は『ピッツァ・ディ・パスクワ』と呼ばれるものです。
特徴としては、チーズパンと言われるだけにふんだんにチーズを使うのですが、その味の違いを出すのには羊のミルクからなるペコリーノチーズの分量や種類にこだわる事と、エメンタールチーズの様な穴あきチーズを生地の中に折り込むことによって、切った時に半分溶けた状態でチーズが顔を出す穴ができます。
養豚がウンブリアでの主な産業の一つである事からか、チーズパンの材料の油脂は豚のラードが使われていることが多かったのですが、近年はヘルシー志向もあってかオリーブオイルが使われている事が多くなった気がしています、
また、アルミの幅広筒形の型が主にその専用型として売られていますが、最近では自由にパウンドケーキ型で焼いたものも出回っています。
各家庭で受け継がれるノンナやマンマのレシピ
ノンナはおばあちゃん、マンマはお母さんです。
誰もが我が家のレシピが最高!と言い合います。
私は義母から直接伝授してもらえる機会はありませんでしたが、義姉が義母のレシピを保管していて教えてもらう事ができました。
因みに義姉は彼女の実母のレシピも持っていました!
問題は、重要な小麦粉の分量などイタリア語でqbとしか書かれていません!
これはquanto basta “クアントバスタ”の意味で、適量とか十分な量とかの意味なのです。
要するに目分量・・初心者にはなかなかハードルが高いものでした(汗)。
一つのレシピ例
- 薄力粉 250g
- 強力粉 250g
- 卵 2個
- パルミジャーノレッジャーノ 200g
- ペコリーノロマーノ 削ったもの 100g
- エメンタールチーズの様な穴あきチーズ 100g
- オリーブオイル 70g
- 牛乳 250 g
- ビール酵母一袋分
- ハチミツ 15 g
- 塩 10g
- 胡椒 好みにより適量
- 粉類は合わせてふるっておき、酵母、ハチミツ、パルミジャーノ、ペコリーノチーズを合わせロボットの場合は速さを中にして混ぜ合わせる
- 牛乳を少しだけ温めて少しずつ①に加えていく
- 卵をよくかき混ぜてから少しずつ生地に加えていく
- 卵がしっかり生地に馴染んでからオリーブオイルも少しずつ加えてその後ロボットで12分間くらい捏ね続ける。
- 捏ねながら塩と胡椒を加え、穴あきチーズをサイコロ状に切って加えていく。
- 一旦生地をこねる台の上に生地を移して手で捏ね、その後折りたたむ作業を数回繰り返す。
- 型に入れる。大きなものを一つ作るか2当分もしくは3等分。
- 布巾をかけて三時間以上の発酵時間を設ける。
- オーブンにお水を入れた容器を入れて180度にセット。
- 焼き始めてから25分後に水を入れた容器を取り出し、引き続き焼き続ける。
- 時間の目安は約一時間。楊枝をさして焼き具合をチェック。
その名はトルタそれともピッツァ?ウンブリアのイースター伝統チーズパンを紹介!
今回は私の大好きなウンブリアのイースター伝統チーズパンを紹介しました!
このまま切って食べるのも良いのですが、薄くスライスして生ハム類を挟んで食べたり、赤ワインに浸しながらもいただきます。
復活祭の翌日月曜日はイースターマンデーですが、イタリアではハイキングやピクニックに行くのが伝統です。
その際にはお弁当としても大活躍です。
その名はトルタそれともピッツァ?ウンブリアのイースター伝統チーズパンを紹介!
最後までお付き合いありがとうございました!