今回のテーマはダビデ像はポルノ?アメリカフロリダ州で校長が解雇された件に関してイタリアでの反応を紹介!です。
フロリダ州のタラハシー・クラシカル・スクールにおいて、ルネサンス美術の授業でミケランジェロのダビデ像の画像を生徒に見せた事で保護者の間から抗議があり、すぐさま教育委員会が校長解雇に至ったというニュースがイタリア国内で波紋を起こしています。
3月末にアメリカから届いたこの嘘の様な出来事に、当然ながらダビデ像の母国イタリア、とりわけフィレンツェでは怒りと呆れの感情を隠しきれずにいます。
そして逆に、フィレンツェのダリオ・ナルデッラ市長は、解雇されたホープ・カラスキヤ校長を讃えてフィレンツェに招待し表彰したいと発言しているほどです。
今回は、このニュースを取り上げて、イタリアでこの事に発信されている大変重要と思えるメッセージもお伝えしたいと思います。
ダビデ像はポルノ?アメリカフロリダ州で校長が解雇された件に関してイタリアでの反応を紹介!
最後までお付き合いください!
目次
ダビデ像はポルノ?
ダビデ像はどうしてポルノじゃないの?
米フロリダ州で、ルネサンス彫刻の傑作「ダビデ像」の写真を小学生に見せた校長がクビになった。「ポルノ」を見せたと抗議があったからだ。母国イタリアは「あまりにも無知」とカンカンだ https://t.co/O4rbTKulin #ニューズウィーク日本版
— ニューズウィーク日本版 (@Newsweek_JAPAN) April 1, 2023
このニュースの舞台はアメリカのフロリダ州です。
今回解雇されたホープ・カラスキヤ元校長は27年間美術史を教える教師でした。
約一年前からタラハシー・クラシック・スクールの校長を勤めていたそうです。
この学校の中学一年生(11歳)の授業において、ルネサンスの巨匠ミケランジェロのダビデ像の画像を見せた事で辞任に至る結果となりました。
一部の保護者の反応
このニュースにおいて勘違いしてはいけないのは、あくまでも数人の保護者からのクレームであって、保護者全員の意見ではありません。
学校では授業で取り上げるトピックにおいて予め保護者に通達しておいた方が良いと思われる場合はレターで通知をするシステムになっているそうです。
ただし、今回はそのレターを送る手続きはされていたものの、不運な事に保護者の元には届いていないというハプニングが重なりました。
ある母親はダビデ像が裸体であることからポルノとみなし、学校側に講義をしました。
また、その画像を目にした時に恥ずかしく感じたという娘の話から、レターでの通達さえあれば予め心の準備をさせられたのにという保護者もいたそうです。
確かに思春期の子供たちの対応もわからなくはありません。
ホープ・カラスキヤ元校長の見解
『ダビデ像が裸体であっても不適切な事は何もありません。これは芸術です。』
『“アダムの創造”も然りですが、もし服を着た状態で描かれていたならば、それは聖書の物語としては不正確という事になります。』
『芸術を認め楽しむ事は、キリスト教の価値観に反する事では決してありません。』
『西洋文明や人間教育テーマである善・真・美を掲げる古典研究の学校で、この様な事が起きるのは心外です。アメリカにおいては過激なほどセクシュアルな社会がありますが、学生たちは身体そのものには何の問題も無く、恥じる事もない事を理解する必要があります。』
この件に関してのイタリアでの反応を紹介!
ダビデ像のオリジナルを保存しているフィレンツェのアカデミア美術館館長のチェチリエ・ホルバルグは、『ダビデ像をポルノと呼ぶのは聖書や西洋文化を理解していない証拠』であると反発しています。
ダビデ像はなぜ裸なのか?
そもそも、裸体である事を非難する前になぜ裸体であったのかを理解できていないところが問題視されています。
FB上に“アメリカの親御さんへ”と投稿された一人のイタリア人の発信内容が素晴らしい!
そもそもこのダビデ像は、フィレンツェの大聖堂裏手に何年も置かれていた巨大な大理石の塊に、25歳のミケランジェロが挑んで彫刻したものです。
多孔質で壊れやすくもあったので、誰もそれを彫刻しようとは思いませんでした。
ダビデは当時の小さなフィレンツェ共和国を象徴としていて、誇り高く集中した眼差しで、教皇庁や帝国といった大きな敵(ゴリアテ)に対して恐れを抱かずむしろ打ち据える姿なのです。
そして裸体であるのは、ダビデは神による恩寵だけを身に纏っている姿だからで、神に守られているので敵を倒すために必要なものは何もないという事を理解する必要があります。
更にはギリシャ文化の美しさと古典的な調和を再発見した時代、ルネサンスにおいて、その姿は美しくある必要もあったのです。
ミケランジェロは約3年の月日をかけてこの像を完成させました。
当時この像をどこに設置するかにおいては、レオナルド・ダ・ヴィンチやボッティチェリなど専門家を集めたい委員会まで作られました。
最もふさわしい場所にこのフィレンツェの象徴を設置する、即ち裸体像を隠すのではなく世界に向けて披露する事を目的としたわけです。
最終的にシニョーリア広場が選ばれると四日間かけて運ばれました。
まるで凱旋のようでフィレンツェの人々にとっては正に祝祭だったそうです。
現在はその場所に置かれているのはレプリカですが、この場に置かれている事で世界が他人調和で満たされなければならないというメッセージを常に発信してくれています。
この像をポルノと呼ぶアメリカ人のみなさん、そのポルノ産業を発明してテレビ・映画・広告・ウエブ等に猥褻的なイメージを溢れさせたのはゴリアテであるあなたがたではないですか。
逆に私たちはルネッサンスの発明者なのです。
これは、一人のイタリア人ジョヴァンニ・クッチルディ氏のFBの投稿から引用させていただいたものです。
正に感動的にも思える内容でした。
イタリア政府の見解
ジョルジャ・メローニ首相が率いる政府は、アメリカの公正さや多様性を求める事により、従来の文化や伝統を否定する傾向に対抗する手段の一環として、イタリアの歴史的な遺産を傷つける者を取り締まると宣言しています。
ダビデ像はポルノ?アメリカフロリダ州で校長が解雇された件に関してイタリアでの反応を紹介!まとめ
今回は、3月末に起きたアメリカフロリダ州での校長解雇というニュースに対するイタリア側の反応も含めて取り上げてみました。
当事者であるホープ・カラスキヤ元校長がイタリアの『コッリエレ・デッラ・セーラ紙』のインタビューに答えた中に次の様な言葉がありました。
『私は政治的には穏健派であり保守的なキリスト教徒です。その上様々な選択の擁護者でもあります。しかし、重要なのはどこで線引きをするかという事です。裸体である事を最もよく理解するのはキリスト教カトリックの視点からなのです。それは聖なるものであり猥褻なものではありません。でもその神秘性や価値を理解させる教育が不足しているのです。』
『ポルノ産業に取り憑かれた社会では、若者たちは毎日あらゆる種類の画像を浴びさせられ、その結果何もないところ、むしろ神聖なるものからも卑猥なものを見るという不条理な防衛反応が生み出されてしまっています。』
世の中のありとあらゆるバランスが崩れている事に、警告を鳴らす声が多い昨今です。
冷静に物事を捉える事は今後ますます大きな課題になると思います。
ダビデ像はポルノ?アメリカフロリダ州で校長が解雇された件に関してイタリアでの反応を紹介!
最後までお付き合いいただきありがとうございました!